事務所だより 2026年1月号
令和7年版労働経済白書を踏まえた労働力不足と社会保険制度の展望
1.労働力不足と多様化する就業意識
令和7年版労働経済白書では、日本経済が直面する最大の課題の一つとして「労働力不足」が改めて強調されています。少子高齢化の進展により、生産年齢人口は着実に減少を続けており、企業は人材確保に苦慮しているのが実情です。従来の「長時間労働」「終身雇用」といった働き方は、若年層を中心に支持を失いつつあり、就業意識は大きく変化しています。
近年では「ワークライフバランスの重視」「副業・兼業の容認」「リモートワークの普及」など、働き方の多様化が進み、従業員は自らのライフスタイルに合った柔軟な就業環境を求めています。企業にとっては、従来型の画一的な雇用管理では人材を惹きつけることが難しくなり、柔軟な雇用管理を通じて「働きやすさ」を追求することが競争力の源泉となっています。
具体的には、短時間正社員制度やフレックスタイム制、在宅勤務制度の拡充などが挙げられます。これらは単なる福利厚生ではなく、労働力不足を補うための戦略的施策であり、企業の持続的成長に直結するものです。
2.今後の社会保険制度の展望
~「働く人を守る制度」から「働き方の選択肢を広げる制度」へ~
労働力不足と就業意識の変化は、社会保険制度にも大きな影響を与えています。社会保険は「働く人を守る制度」であると同時に、「働き方の選択肢を広げる制度」へと進化することが求められています。
今後の展望としては、以下の点が注目されます。
●被扶養者認定要件の見直し
従来は収入基準や同居要件などが厳格に定められていましたが、働き方の多様化に対応するため、柔軟な認定基準への移行が検討されています。(19歳以上23歳未満の扶養認定時の年間収入要件は150万円に引き上げ済。令和7年10月1日適用開始)
●年収の壁問題への対応
「年収106万円の壁」は、短時間労働者が社会保険に加入するか否かの分岐点となっており、就業調整を余儀なくされる要因でした。これを撤廃することで、労働者が希望する労働時間や収入を制限なく選択できるようになり、労働参加の促進につながります。(今後3年以内に施行予定)
●社会保険の適用拡大
従来は大企業や一定規模以上の事業所に限定されていた適用範囲が、中小企業やパートタイム労働者にも広がりつつあります。(令和9年以降順次改正予定)雇用形態にかかわらず安心して働ける環境が整備されることが期待されています。
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